誹謗中傷・風評被害を無視してはいけません

総務省の「平成26年通信利用動向調査」によると、日本におけるインターネットの人口普及率は実に82.8%にものぼります。PCやスマートフォンなどの情報通信機器でインターネットを利用するのがもはや当たり前の時代であり、それと同時にネット上での誹謗中傷や風評被害も急速に増加しています。そのため、ネット掲示板やSNSなどにあげられた悪評は瞬時に社会全体に広がり、そのまま鵜呑みにされてしまう可能性があるのです。当コラムでは、そうした誹謗中傷・風評被害の書き込みを放置することによるリスクについてご紹介します。

誹謗中傷・風評被害を放置することによるリスク

インターネット上の悪評の影響はその本人だけでなく、組織にも大きな危害を加えるということを覚えておく必要があります。たとえば会社のメンバーが罪を犯してしまったり、悪行を働いたりしたら、「同じ会社だけど関わりない人だから」と知らん顔をするわけにはいきません。会社の名前がメディアで報道され、ネットで拡散されてしまうと、同じ組織に属する人々にも大きな影響を与えてしまうのです。そのため、誹謗中傷や風評被害を放置することなく、迅速に対応する必要があります。それらの悪評を放置してしまうと組織として以下のような4つのリスクが考えられます。

【悪評を放置することによるリスク】

  • 1.営業上の損害
  • 2.融資の減額・停止
  • 3.採用活動の阻害
  • 4.離職・転職率の増加

企業活動において、取引先を選定する際にネットで企業評価などの情報を調べるのは当たり前のことです。その際にネットで検索した企業名の悪評が目立ったら、何を思うでしょうか。取引自体を見直す企業が出てきてもおかしくありません。また、金融機関の中には、ネット上の情報を査定の参考にする場合があります。悪評によって融資を受ける際にマイナス要素となり、融資額の検討、停止につながる危険もあるのです。

そうしたリスクは取引上だけでなく人材にも及ぶことが考えられます。中でも影響が大きいのは採用活動。就職活動において、採用系の口コミサイトを参考にする人の割合は半数を超えており、悪評を目にした場合に就職をためらうのは当然です。面接や応募をキャンセルする人が増え、就職活動中の仲間へその悪評は共有されていきます。採用コストの高騰は必須でしょう。また、リスクは内部にも影響を及ぼします。風評被害によってストレスを抱えた従業員はやる気を失い、転職や離職を誘発するきっかけにもなりうるのです。

誹謗中傷・風評被害が拡散されてしまう場合の流れ

誹謗中傷や風評被害は拡散が早く、対策が後手に回れば悪評の払拭が難しくなります。損害からの回復にも膨大な時間を要することになる可能性が高いだけに、そうした“危険分子”は影響が小さいうちに芽を摘んで必要があります。では、そうした対策が遅れてしまった場合はどうなるのでしょうか。就活中の学生を例にして考えてみましょう。

【悪評が拡散される場合の流れ】

【1】掲示板に会社についての悪い評判の書き込む
就職活動が思うようにいかない学生が悔しさから、不満に思ったことをネット掲示板に書き込みました。すると同じ思いをした学生や騒ぎに便乗する書き込みが次々になされ、尾ひれがついていきます。掲示板だけでなく、ブログ・SNSなどをはじめとしたソーシャル・メディアで話題になり、さらに発信・拡散され続けます。

【2】ネットで社名を検索すると悪評がヒットするようになる
企業名やブランド名、経営陣氏名などをキーワードに、GoogleやYahooなどで検索をかけたときに、上位表示が悪評ばかりになるという事態に発展します。俗に言う“ブラック企業”という評判が広がり出します。

【3】就活生の間で悪い噂が広まってしまう
その噂や憶測、評判が誤解や誤認であり、拡大解釈だとしても、それを証明するものがない限り、人は不安から風評を真実として思い込む傾向にあります。そのため、就活中の学生たちの共有認識となり、風評被害はさらに拡大し続けます。

【4】採用希望者が減り、内定辞退が相次ぐ
悪評で有名になってしまうと、その企業への就職を希望する人は少なくなるでしょう。そのため、競合会社などに優秀な人材を流出し、採用活動自体が困難となります。人材を確保できないため、採用コストも想定よりかかってしまうことも考えられます。

すべての企業が背負っている風評被害に遭うリスク

商品一つにとっても使いやすさや好みは人それぞれ異なります。その商品の印象で製造する会社のイメージも変わってくるものです。また、たった一人の店員の態度が横柄だったとしたら、その店舗全体の印象が悪くなります。つまり、さまざまな物やサービスが溢れかえっている現代においては、何がきっかけで悪評が広まってしまうかをすべて把握することは難しく、未然に悪い噂の流布を防ぎきれないこともあるのです。

たまたま感じた不平・不満や事実無根の悪評を世の中へ発信する方法はごまんとあります。しかも、匿名で気軽に誰でもできてしまうネット上であれば、罪悪感を覚えることなしに悪評を書き込んでしまう人も少なくないでしょう。現代はこのような環境下にあるため、いつどこで“誹謗中傷・風評被害の種”がまかれたとしても不思議ではないのです。

つまり、ネット社会に身を置く以上、すべての企業が誹謗中傷・風評被害に遭うリスクからは逃れられないのです。そのため、社会人として働くのであれば、誹謗中傷・風評被害は他人事ではなく、「明日は我が身かもしれない」ということを肝に銘じておく必要があります。風評被害に遭うリスクは、この世に存在するすべての企業が背負っているものなのです。

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