ネットリテラシーの欠如が企業の首を絞める
スマートフォンの普及によって、誰もがいつでもどこでも気軽にSNSで発言したり、画像や動画をインターネット上に投稿したりできる時代になりました。ただ、利便性がある反面、SNSでの不適切な投稿によって炎上し、社会問題にまで発展してしまうケースが増えてきています。ネット社会の繁栄とは裏腹に“負の側面”も急速にクローズアップされています。こんな時代なだけに、ネットリテラシーを欠いた人物が社内や組織に1人でもいたらどうでしょう。企業や団体の品格が根底から疑われかねないのです。
高まり続けているネットリテラシーの重要性
社会人や中高生はもちろんのこと、今や小学生や幼稚園児でさえスマートフォンを持つネット全盛の時代。小さなころからネットやSNSに親しんで育った若年層が増えたことに比例して、常識では考えられないような不適切投稿や炎上騒ぎも増加しています。たとえば、飲食店のアルバイト店員が冷蔵庫に入って遊んだり、女子高生が線路の上を横断したりした動画や画像をSNSで投稿することで、ネットが炎上することも近年では珍しいことではなくなってきました。
そうしたネット上に良し悪し構わず情報を投稿することに抵抗のない世代もいずれ社会人になります。ビジネスマンとして立派な大人になったとはいえ、ネットの利用について管理せずに野放しにしておくことは大きな危険を孕んでいます。企業としては一つの投稿が仇となり、自社の損失にも直結することもあり得るだけに、決して無視できない問題でしょう。
また、“ネット上の不祥事”について注意すべきなのは若年層だけではありません。今では企業の管理職や公務員までが不適切な投稿をして社会問題化することも日常茶飯事です。こうしたトラブルが起きないようにするには、まず諸問題に対して危機意識を持つことが重要。その上で「ネットリテラシー教育」を充実させることが急務なのです。
大学が本腰を入れるネットリテラシー教育
内閣府の調査によると、2014年時点で99%の高校生がインターネットを利用しています。もはや現代人にとってネットは生きていくうえで欠かせないツールなだけに、それ相応の教育を学生のうちから始めるのは当然の流れとも言えます。今では国公立、私立を問わず多くの大学がネットリテラシー教育に力を入れるようになってきました。
主要なカリキュラム内容も、「意図しない情報の発信、漏洩」や「SNSへの投稿に伴う過度の批判や抗議の集中(炎上)」「インターネット上の詐欺的犯罪」「社会的に望ましくないと考えられる情報の発信・共有」をどう避けるかといった対処法やネットの適切な利用法に主眼が置かれています。危機意識を植えつけ、正しい楽しみ方を教えることでトラブルを未然に回避することを目的としています。
ただ、そうした取り組みを行っていても、実際にネット上でのトラブルがもとで退学させられたり、金銭などの損害が生じたり、精神的な傷(トラウマ)を負ったりすることが学生の身に日常的に起きています。健全な学生生活を送るためにも、そして社会人教育の一環としても大学が指導・教育に本腰を入れ始めているという実情があるようです。
役員レベルから率先して取り組むことが大切
ひとたび不適切な投稿が問題になれば業績や評判が大きく損なわれ、しかも社会的責任が問われるだけあって、大学と同様にネットリテラシー研修に力を入れる企業もまた増えています。しかし、なかには従業員に会社への忠誠心や不適切投稿によって被る不利益をただ説明するだけで終わっている企業や正社員だけを教育の対象とし、派遣社員やアルバイトなどへの教育が手薄な企業もまだ多いようです。
しかし、こうした不徹底な取り組みでは、SNSによる不適切な投稿を撲滅してトラブルを未然に防ぐことはできないでしょう。企業利益を著しく損なう炎上を防ぐには、SNSの利用に関する制度規程やガイドラインを策定し、これを新人社員研修に取り入れたりするなどより積極的な活用が欠かせないのです。それでは、SNSに関する制度規程やガイドラインはどのように策定すればよいのでしょうか?
SNSをどう使うかが問われる時代
Twitter、Facebook、Instagram、LINEなど、業種にもよりますが企業が広報・宣伝や顧客とのコミュニケーション目的でSNSを使うことはもはや当たり前の時代です。いまや多くの企業にとっての課題はSNSを扱う従業員のネットリテラシーになります。最近ではSNSの担当者はもちろん、全従業員に対してネットリテラシー教育を行っている企業は珍しくはありません。そしてその教育を行うために必要となるのが、企業によるガイドラインの策定です。SNS活用のガイドライン策定は企業のリスクマネジメントとして、今後は必須となるでしょう。
ソーシャルメディアポリシーとガイドラインの違い
企業がSNSを活用していくうえで自社のサイト上に「ソーシャルメディアポリシー」を掲載しているのをご覧になったことはありますか? ソーシャルメディアポリシーとは、顧客や自社のSNSを閲覧するユーザーに対し、自社のSNSを活用するうえでの目的・約束ごとなどを宣言するものです。
これに対しガイドラインとはあくまで社内において、従業員がSNSを活用するうえでのルールとなるもの。ソーシャルメディアポリシーで顧客やユーザーに対して行う約束ごとを守るため、従業員がするべきことを明確にしたものがガイドラインです。
ソーシャルメディアポリシーとガイドラインは企業のSNS活用において、どちらも不可欠だと言えるでしょう。「自社がどういった目的でSNSを活用するのか?」「そしてそのためにどういった約束ごとを作るのか?」このどちらかの視点が欠けても企業のリスクマネジメントとしては不完全なものとなります。
企業の基準となるガイドラインの策定方法
ガイドラインはSNSを担当する部署が中心となり、他の部署からもヒアリングをしたうえで策定していくのが一般的です。特にガイドラインには法律が絡むこともあるため、総務や法務の確認も必ず取るようにしてください。
また社内だけではなくネット上や書籍など広範囲から情報を入手しそこから自社に合ったものを選択していくことが重要です。情報量が少なかったり、特定のサイト、書籍からだけの情報であったりする場合は間違いや偏りが出るリスクがあります。
ガイドラインの内容は、SNSの使い方といった基本的なことから、何をすればどういったことになるのか?それをしないためにはどうすればよいのかといった意識、責任に関することを、過去のSNS炎上事例を紹介しながら具体的に記載し、SNS初心者であってもしっかりと理解できるようにすることがポイントとなります。
しっかりとしたガイドラインを策定し炎上の防止を
SNSを日常的に扱う企業において、ネットリテラシー教育は当然行うべきです。しかし、それでも企業がネット上で炎上するニュースは後を絶ちません。その理由として、しっかりとしたガイドラインを策定していないということが考えられます。
ネット社会と言われる現代なだけに、SNSなどのソーシャルリスクに関するリテラシーを身につけることは、企業として基本とも言えます。「うちの会社はネットに疎いから」などと現状から目を背けていると、想像もしていないような損害を被ることも考えられるのです。そういう意味でも、ネットリテラシー研修などは会社の役員レベルが率先して取り組み、社員全体に伝えていくべきでしょう。それくらい重要で、経営にも影響をおよぼすかもしれない事項であるということを認識すべきです。